シェリーは昔、酒精強化されてなかった!
初めての投稿から、かなりショッキングな内容です!しかし、これはラヴニールが今皆様に最もお伝えしたい事であり、また、歴史に基づいた長くなる話なので、3回、いやたぶん4回に渡り連載することになるかと思います。よかったらどうぞお付き合いください!
さて、シェリーというと、ワインの本を読んでも語られる事はこんな感じでしょう。
では、シェリーにテロワールは存在しないのでしょうか?! 残念ながら、現在のシェリーに関しては「無い」というしかありません。
では、シェリーには元々テロワールの概念は存在しないのでしょうか?! いいえ、シェリーは元々テロワールに従って造られていたのです!
シェリーの産地について教則本等で語られることは、ほぼ次の1点のみ。ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ、サンルーカル・デ・バラメダ、エル・プエルト・デ・サンタマリアという3つの街を結ぶ三角地帯から産出される、と。
実は、歴史の経過とともに殆ど忘れ去られてしまったのですが、ヘレスには、「パゴ」と呼ばれるテロワールの概念があるのです。「パゴ」とはシェリー産地に点在する小高い丘の様なもので、シェリー産地に連なる様に存在し、産地全体に300ものパゴがあると云われております。昔は、「パゴ」ごとにシェリーの特徴が異なることが知られており、「パゴ」ごとに売買される相場が決まっていて、その相場に 基づいてぶどうの取引がなされておりました。中でも4つの「パゴ」が特に優れていると見做されており、ヘレス・デ・ラ・フロンテーラの街を西から北に取り囲むように、順に”バルバイーナ”、”アニーナ”、”マチャルヌード”そして”カラスカル”と呼ばれるパゴが並んでおります。なかでも”マチャルヌード”はシェリーのロマネ・コンティと称えられ、高く評価されて来ました。
これを私たちに馴染みがあるブルゴーニュに例えると、「パゴ」とは村名アペラシオンに相当します。つまり、”ジュヴレ・シャンベルタン”、”ニュイ・サンジョルジュ”、”ヴォーヌ・ロマネ”、”ピュリニー・モンラッシェ”そして”ムルソー”と、コート・ドール上に名だたる村名AOCがずらりと並んでいるのと同じ、と云って差し支えありません。
ところが、イギリスを筆頭とする世界でのシェリー人気と輸出の拡大による需要の増大、農薬の登場による農業の近代化と工業化、農協の台頭による大量生産と均質化により、ぶどうの取引は品質重視の「パゴ」単位から量重視の「キロ」(kg)単位へと変化し、高品質なぶどうを栽培するという目的が失われ、意欲も喪失してしまいました。そうして、「パゴ」というテロワールの概念に基づいた高品質なシェリー造り、3000年に渡るシェリーの伝統とテロワールの概念が、この50年で消滅してしまったのです。
また驚くべき事に、シェリー造りで昔は酒精強化(アルコールの添加)はなされておらず、本来は収穫したぶどうを天日に干し(アソレオ、またはソレオと呼ばれる)、余分な水分を飛ばし糖度を上げてから醸造しておりました。フィノ用のぶどうでは数時間から、ペドロ・ヒメネスの場合は数週間も天日に干すあいだ、丸いむしろに広げたぶどうを定期的にひっくり返すという気の遠くなる作業をしておりました。
では、なぜアルコールを添加するようになったかと云えば、糖度が低く品質も劣るぶどうを劣化させる事なく高アルコールなシェリーに仕立て上げる為には実に効果的な方法だったからです。これは知られていない事ですが、19世紀におけるぶどうの収量は1ヘクタール当たり1トンから3トンしかなかったものが、今日では10トンから30トンへと、何と10倍にも増えているのです。これだけ収量が増えれば糖度は当然上がりません。また、毎日気の遠くなるようなぶどうをひっくり返す作業もしなくていいので、シェリー製造業者はこの方法をこぞって採用・推奨したのも当然のことかもしれません。
よく知られているように、品質を保証する制度である原産地呼称DOは、スペインで1932年に制定されました。その際シェリー(ヘレス)はリオハとマラガと共に初めて認定されたDOでした。当初はDOの規定で、シェリーはアソレオすることが義務付けられていたのですが、効率と量を優先する生産者団体の要請により徐々に酒精強化が認められ、ついに1975年には酒精強化をしなければいけなくなってしまいました。
品質を保証するためのDOが、品質を犠牲にしてしまう規定へと変化していってしまったとは、何という皮肉でしょうか、、 (次回へ続く)
- 世界3大酒精強化ワインのひとつ
- 産膜酵母を張らせて熟成させる白ワインの一種
- ソレラ・システムによってブレンド&熟成される
では、シェリーにテロワールは存在しないのでしょうか?! 残念ながら、現在のシェリーに関しては「無い」というしかありません。
では、シェリーには元々テロワールの概念は存在しないのでしょうか?! いいえ、シェリーは元々テロワールに従って造られていたのです!
シェリーの産地について教則本等で語られることは、ほぼ次の1点のみ。ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ、サンルーカル・デ・バラメダ、エル・プエルト・デ・サンタマリアという3つの街を結ぶ三角地帯から産出される、と。
実は、歴史の経過とともに殆ど忘れ去られてしまったのですが、ヘレスには、「パゴ」と呼ばれるテロワールの概念があるのです。「パゴ」とはシェリー産地に点在する小高い丘の様なもので、シェリー産地に連なる様に存在し、産地全体に300ものパゴがあると云われております。昔は、「パゴ」ごとにシェリーの特徴が異なることが知られており、「パゴ」ごとに売買される相場が決まっていて、その相場に 基づいてぶどうの取引がなされておりました。中でも4つの「パゴ」が特に優れていると見做されており、ヘレス・デ・ラ・フロンテーラの街を西から北に取り囲むように、順に”バルバイーナ”、”アニーナ”、”マチャルヌード”そして”カラスカル”と呼ばれるパゴが並んでおります。なかでも”マチャルヌード”はシェリーのロマネ・コンティと称えられ、高く評価されて来ました。
これを私たちに馴染みがあるブルゴーニュに例えると、「パゴ」とは村名アペラシオンに相当します。つまり、”ジュヴレ・シャンベルタン”、”ニュイ・サンジョルジュ”、”ヴォーヌ・ロマネ”、”ピュリニー・モンラッシェ”そして”ムルソー”と、コート・ドール上に名だたる村名AOCがずらりと並んでいるのと同じ、と云って差し支えありません。
ところが、イギリスを筆頭とする世界でのシェリー人気と輸出の拡大による需要の増大、農薬の登場による農業の近代化と工業化、農協の台頭による大量生産と均質化により、ぶどうの取引は品質重視の「パゴ」単位から量重視の「キロ」(kg)単位へと変化し、高品質なぶどうを栽培するという目的が失われ、意欲も喪失してしまいました。そうして、「パゴ」というテロワールの概念に基づいた高品質なシェリー造り、3000年に渡るシェリーの伝統とテロワールの概念が、この50年で消滅してしまったのです。
また驚くべき事に、シェリー造りで昔は酒精強化(アルコールの添加)はなされておらず、本来は収穫したぶどうを天日に干し(アソレオ、またはソレオと呼ばれる)、余分な水分を飛ばし糖度を上げてから醸造しておりました。フィノ用のぶどうでは数時間から、ペドロ・ヒメネスの場合は数週間も天日に干すあいだ、丸いむしろに広げたぶどうを定期的にひっくり返すという気の遠くなる作業をしておりました。
では、なぜアルコールを添加するようになったかと云えば、糖度が低く品質も劣るぶどうを劣化させる事なく高アルコールなシェリーに仕立て上げる為には実に効果的な方法だったからです。これは知られていない事ですが、19世紀におけるぶどうの収量は1ヘクタール当たり1トンから3トンしかなかったものが、今日では10トンから30トンへと、何と10倍にも増えているのです。これだけ収量が増えれば糖度は当然上がりません。また、毎日気の遠くなるようなぶどうをひっくり返す作業もしなくていいので、シェリー製造業者はこの方法をこぞって採用・推奨したのも当然のことかもしれません。
よく知られているように、品質を保証する制度である原産地呼称DOは、スペインで1932年に制定されました。その際シェリー(ヘレス)はリオハとマラガと共に初めて認定されたDOでした。当初はDOの規定で、シェリーはアソレオすることが義務付けられていたのですが、効率と量を優先する生産者団体の要請により徐々に酒精強化が認められ、ついに1975年には酒精強化をしなければいけなくなってしまいました。
品質を保証するためのDOが、品質を犠牲にしてしまう規定へと変化していってしまったとは、何という皮肉でしょうか、、 (次回へ続く)