畑で生態系が循環する新世代の農業を造り上げたルードヴィックとは..?
2010年が初ヴィンテージとなるまだ新しい生産者ルードヴィックは、3つ星レストラン「ミッシェル・ゲラール」にてソムリエとして働いていました。 まだ化学物質が使用される以前のボルドー古酒や偉大なブルゴーニュを日常的にサービスしていた彼は、近年のボルドーワインが画一的な味わいになり、感動がなくなってきたことに疑問を抱いておりました。 そんな彼は、グラムノンのワインを飲んでその美味しさに驚き、昔のように心を動かされるワインをいつしか自分で造ることを夢見るようになりました。アンリ・ジャイエ
ルードヴィックは、アンリ・ジャイエについては特別の思いを持っていたようです。アンリ・ジャイエのワインには他のワインからはなかなか感じ取ることができない心揺さぶられるものを強く感じており、それが一体どこから来るのか、とても興味を持っておりました。
人はワイン造りに秘密はないと云いますが、アンリ・ジャイエに関しては、彼は間違いなくワイン造りの秘訣を知っていたはずだ、と断言しています。今となっては本人に聴くことが叶わなくなってしまったことに、残念さを滲ませておりました。
さて、月日が経ち彼が見つけた理想的な畑は、ラングドック最東部の奥地ヴィック・ル・フレスク村にあります。ここはラングドックにありながらとても涼しいクリマであることが特徴で、内陸の盆地で冷気がこもる特異な気候風土を有しております。グルナッシュ・ノワールを主体に、ムールヴェードルが植えられており、特にセレクション・マサルにて植えられた樹齢の古いグルナッシュが多く存在していたことが彼にとっては大きな魅力でした。
この土地ならではのワインのためにできること
ここで彼が始めたのは循環型農業です。ぶどうの木が最大限活発に成長できるようビオディナミを行い、堆肥は用いず羊を畑に放し飼いにしています。畑の草を食べた羊がその場で排泄し、その土を肥やします。他所から必要なものを持ってくるのではなく、その場だけで生態圏が完結するという新世代の農業を目指していました。そうすることにより、最大限この土地のテロワールが表現でき、この土地ならではのワインが生まれると考えたのです。
醸造においても一切の妥協はありません。畑でぶどうに自然と付いた野生酵母の働きにより自然に発酵させ、醸造中の亜硫酸の使用は一切なく、ビン詰め時に1g/HLとごく僅か加えるのみ。ポンプは使用せず重力を利用して醸造を行います。
グルナッシュ・ノワールからはどんなタイプのワインでも造れる
出来ることはすべてやり尽くした2つのTOPキュヴェは傑出した味わいです。ルードヴィックに言わせれば、グルナッシュ・ノワールからはどんなタイプのワインでも造れるのです。彼の白ワインは、実にグルナッシュ・ノワールをそのまま絞った果汁から醸したブラン・ド・ノワール。シャトー・ヌフ・デュ・パプに代表される濃厚な赤ワインは、典型的なグルナッシュから造られた赤ワイン。そして、モーリーやバニュルスの様に過熟させたぶどうから造られた甘口ワインなど、実に多様です。
そして彼の造るグルナッシュ・ノワールから造られた2つのTOPキュヴェは、まるでブルゴーニュの様!
どこまでも優しくしなやかでエレガント。卓越したフィネスは、もしかするとアンリ・ジャイエからの贈り物….? なんて思わせてしまう深い味わいです。
ルードヴィックの目指す想いと仕事の結晶が、ここにあります。